財形年金貯蓄の仕組みは?

財形年金貯蓄とは、勤労者が事業主の協力を得て、給与から一定額を天引きして行う、老後の資金作りを目的とした積立貯蓄をいいます。

事業主を通じて積み立て、60歳以降の契約所定の時期から5年以上の期間に渡って年金として支払いを受けることを目的とした貯蓄で、財形制度を行なっている企業等に勤める55歳未満の勤労者であれば、誰でも行なうことができます。

ここでは、財形年金貯蓄の基本的な仕組みについて、簡単にまとめてみました。

目次:コンテンツ構成

財形年金貯蓄の基本事項について

財形年金貯蓄を理解する上で、まずは基本事項を押さえておきましょう。

財形年金の位置づけ

財形年金は、「勤労者財産形成年金貯蓄」とも言い、「一般財形」や「財形住宅」と共に、勤労者が財形貯蓄取扱機関と契約を締結し、事業主が勤労者に代わって、賃金から天引きする方法により貯蓄を行う制度である「財形貯蓄制度」の一つです。

一般に財形年金貯蓄は、老後の生活費の安定を図るために、将来の年金資金を積み立てるものであり、一般財形貯蓄とは異なり、所定の要件を満たせば、財形住宅貯蓄と合わせて元利合計で550万円(保険型商品の場合は払込額で385万円)まで利子等が非課税となります(一般財形貯蓄や財形住宅貯蓄との併用は可能)。

財形年金の利用対象者

財形年金は、会社員や団体職員、国家公務員、地方公務員、船員など、事業主に雇われている「満55歳未満の勤労者」の方が、現在、自分の勤務先に「財形貯蓄制度」が導入されている場合に利用することができます。

※自営業者や無職の方は利用できない。
※役員報酬のみの「役員」の方は利用できない(兼務者は利用可)。

財形年金の積立方法

財形年金は、自分で資金を拠出して積み立てるのではなく、毎月の給料や夏・冬等のボーナスから天引きで積み立てます。

財形年金の資金使途

財形年金は、資金使途が自由な一般財形とは異なり、60歳以降に年金として受け取るための「老後資金」を目的としています。これは、確定拠出年金や個人年金保険などと同様、公的年金(国民年金、厚生年金)を補完するためのものであり、その資金使途として、老後の年金支払いが目的であることが必要です。

財形年金の積立期間と払い出し

財形年金は、原則として、5年以上に渡って定期的に積み立てる必要があります。また、60歳以降に年金として受け取る(払い出す)場合は、所定の金額まで非課税となりますが、一方で年金以外の払い出しを行うと要件違反で非課税措置がなくなり、残額は財形年金と認められません。

なお、特例として、災害や疾病、寡婦、寡夫などの理由による払い出しは、一定の条件を満たす場合、非課税となります。

財形年金貯蓄の活用方法について

財形年金貯蓄を始めるにあたっては、勤務先が選定した取扱金融機関の中から、勤労者が貯蓄契約先を決めます。また、毎月の積立については、賃金(給料・賞与)から事業主が天引きし、契約者に代わって取扱金融機関に払込む方法で行います。

財形年金の契約

財形年金は、一人一契約のみとなっており、また一般財形とは異なり、預け替えはできません。なお、積立時と積立終了時に、以下のような書類を提出します。

・積立時:財産形成非課税年金貯蓄申告書
・積立終了時:財形年金貯蓄の非課税適用確認申告書

財形年金の取扱金融機関

財形年金は、現在、都市銀行や地方銀行、第二地方銀行、信託銀行、ゆうちょ銀行、信用金庫、労働金庫、信用協同組合、農林中央金庫、商工組合中央金庫、農業協同組合・同連合会(JA)、漁業協同組合・同連合会、水産加工業協同組合・同連合会、金融商品取引業者、生命保険会社、損害保険会社などで取り扱われており、実際の利用先は、勤務先が選定したところとなります。

財形年金の対象商品

財形年金の対象商品(積立商品)には、現在、以下のようなものがあり、また利率(金利)については、預け入れる商品によって異なります。

・銀行等の商品
-定期預金、定額貯金など
・信託銀行の商品
-合同運用信託
・証券会社の商品
-公社債、投資信託など
・生命保険会社の商品
-積立保険
・損害保険会社の商品
-積立傷害保険

財形年金の受取期間と据置期間

財形年金は、満60歳以降に年金として受け取ることを目的としており、現在、受取期間と据置期間は以下のようになっています。

●年金の受取期間

満60歳以降に5年以上20年以内(保険商品の場合、終身受取も可能)

●年金の据置期間

積立終了から年金受取開始まで、5年以内の据置期間を設定することが可能

財形年金の非課税措置

財形年金は、財形住宅と合算で、以下のような非課税措置があります。

●預貯金型商品の場合

元本(預入額+元加利息)550万円まで利子等非課税

●保険型商品の場合

払込額(払込保険料累計額)385万円まで利子差益非課税

財形年金の目的外解約時のペナルティー

財形年金は、所定の年金以外の払い出しを行うと、以下のようなペナルティーが課せられます。

●預貯金型商品の場合

財形住宅と同様、5年遡及課税で過去5年間(60カ月)の利子に課税

●保険型商品の場合

財形住宅とは異なり、解約返戻金や積立配当金の差益の全てが一時所得として総合課税

財形年金の転職した場合の継続措置

財形年金は、転職した場合、退職後2年以内に転職先の事業主を通して申出ることにより、従前の契約を転職先で継続できます。

・転職先において、財形貯蓄制度がなければ継続できない。
・転職先において、従前の契約の金融機関と継続できない場合、従前の契約に基づいた新契約に預け替えができる。

財形年金貯蓄のメリットとデメリット

財形年金貯蓄は、資産形成の定番の一つですが、以下のような「メリット」と「デメリット」があります。

財形年金のメリット

◎一般財形と異なり、非課税措置があります。また、年金の支払いが終わるまで非課税措置が継続され、老後生活の安定に役立ちます。

◎給与天引きで、定期的(毎月・賞与月)に積立ができるので、手間をかけずに、将来の老後資金を確実に貯められます(将来、公的年金の補完となる年金を受け取れる)。

◎所定の要件(継続する1年以上の期間、定期の積立、50万円以上の残高)を満たすと、住宅ローンの一つの選択肢として、長期・低利の「財形持家転貸融資制度」を利用することができます。

|財形持家転貸融資制度|
財形貯蓄制度を利用している勤労者に対し、保有する財形貯蓄残高の10倍(上限4,000万円)までの範囲内で、事業主を通じて、または直接に、住宅を購入・建設・改良(リフォーム)するために必要な資金を融資する制度。

◎勤務先が「財形給付金制度」や「財形基金制度」を導入している場合、勤労者の資産形成に大きな利点があります。

|財形給付金制度|
勤務先(事業主)が財形貯蓄をしている勤労者に、毎年定期的に金銭を拠出することにより、勤労者の財産づくりを一層援助促進する制度。

|財形基金制度|
勤務先(事業主)と財形貯蓄を有する勤労者が「勤労者財産形成基金」を設立して事業主から拠出を受けた金銭を運用し、その元利合計額を勤労者に支給することにより、勤労者の財産づくりを一層援助促進する制度。

財形年金のデメリット

◎老後の資金づくりを目的としており、目的外解約時にはペナルティーとして課税されます。

◎投資型商品が用意されていないので、インフレ(物価上昇)には対応できず、また高いリターン(運用収益)も期待できず、大きく殖やすのには向いていません。

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