財形住宅貯蓄の仕組みは?

財形住宅貯蓄とは、勤労者が事業主の協力を得て、給与から一定額を天引きして行う、住宅資金のための積立貯蓄をいいます。

事業主を通じて積み立てていく、マイホームの建設や購入、リフォームなど、住まいの資金作りを目的とした貯蓄で、財形制度を行なっている企業等に勤める55歳未満の勤労者であれば、誰でも行なうことができます。

ここでは、財形住宅貯蓄の基本的な仕組みについて、簡単にまとめてみました。

目次:コンテンツ構成

財形住宅貯蓄の基本事項について

財形住宅貯蓄を理解する上で、まずは基本事項を押さえておきましょう。

財形住宅の位置づけ

財形住宅は、「勤労者財産形成住宅貯蓄」とも言い、「一般財形」や「財形年金」と共に、勤労者が財形貯蓄取扱機関と契約を締結し、事業主が勤労者に代わって、賃金から天引きする方法により貯蓄を行う制度である「財形貯蓄制度」の一つです。

一般に財形住宅貯蓄は、一般財形貯蓄とは異なり、所定の要件を満たせば、財形年金貯蓄と合わせて元利合計で550万円まで利子等が非課税となります(一般財形貯蓄や財形年金貯蓄との併用は可能)。

財形住宅の利用対象者

財形住宅は、会社員や団体職員、国家公務員、地方公務員、船員など、事業主に雇われている「満55歳未満の勤労者」の方が、現在、自分の勤務先に「財形貯蓄制度」が導入されている場合に利用することができます。

※自営業者や無職の方は利用できない。
※役員報酬のみの「役員」の方は利用できない(兼務者は利用可)。

財形住宅の積立方法

財形住宅は、自分で資金を拠出して積み立てるのではなく、毎月の給料や夏・冬等のボーナスから天引きで積み立てます。

財形住宅の資金使途

財形住宅は、資金使途が自由な一般財形とは異なり、マイホームの建設(一戸建て)や購入(新築・中古を問わず、一戸建て・マンション)、リフォーム(工事費75万円超)など、住まい(持ち家)の資金づくりを目的としたものとなっています。

財形住宅の積立期間と払い出し

財形住宅は、原則として、5年以上にわたって定期的に積み立てる必要があります。また、所定のマイホーム資金として払い出す場合は、「財形年金」と合わせて、貯蓄残高550万円まで利子等に税金がかかりませんが、一方で要件を満たさない払い出しの場合は、利子等に課税されます。

※住宅資金として使う場合は、5年以内でも非課税。

財形住宅貯蓄の活用方法について

財形住宅貯蓄を始めるにあたっては、勤務先が選定した取扱金融機関の中から、勤労者が貯蓄契約先を決めます。また、毎月の積立については、賃金(給料・賞与)から事業主が天引きし、契約者に代わって取扱金融機関に払込む方法で行います。

財形住宅の契約

財形住宅は、一人一契約のみとなっており、積立時に「財産形成非課税住宅貯蓄申告書」を提出します。また、一般財形とは異なり、預け替えはできません。

財形住宅の取扱金融機関

財形住宅は、現在、都市銀行や地方銀行、第二地方銀行、信託銀行、ゆうちょ銀行、信用金庫、労働金庫、信用協同組合、農林中央金庫、商工組合中央金庫、農業協同組合・同連合会(JA)、漁業協同組合・同連合会、水産加工業協同組合・同連合会、金融商品取引業者、生命保険会社、損害保険会社などで取り扱われており、実際の利用先は、勤務先が選定したところとなります。

財形住宅の対象商品

財形住宅の対象商品(積立商品)には、現在、以下のようなものがあり、また利率(金利)については、預け入れる商品によって異なります。

・銀行等の商品
-定期預金、定額貯金など
・信託銀行の商品
-合同運用信託
・証券会社の商品
-公社債、投資信託など
・生命保険会社の商品
-積立保険
・損害保険会社の商品
-積立傷害保険

財形住宅の目的支出の要件

現在、財形住宅の目的支出の要件は、対象となるマイホーム(戸建てやマンション)において、以下のようになっています。また、払い出しの際には、住宅の登記事項証明書や工事の請負契約書(売買契約書)、住民票の写しなど、所定の書類を提出する必要があります。

・床面積が50平米以上のもの。
・中古住宅の場合、20年(耐火構造は25年)以内に建設されたもの、または一定の耐震基準を満たすもの。
・建設または購入する住宅に勤労者自身が住むこと(単身赴任の場合、家族の住む家が生活の本拠地となって対象となる)。
・リフォームの場合、工事後の住宅の床面積が50平米以上であること。
・リフォームの場合、当該工事費用の総額が75万円を超えること。

※目的外の支出では、非課税措置がなくなる。

財形住宅の非課税措置

財形住宅は、財形年金と合算で、元利合計(払込累計)で550万円まで利子等に税金がかかりませんが、一方で目的外解約時には、以下のようにペナルティーとして課税されます。

・預貯金の場合、払い出しが行われた月から5年間さかのぼり、この間に生じた利子の全てに課税。
・保険などの場合、解約時に一括して利子(差益)が生じるため、全期間の利子(差益)に課税。

財形住宅の転職した場合の継続措置

財形住宅は、転職した場合、退職後2年以内に転職先の事業主を通して申出ることにより、従前の契約を転職先で継続できます。

・転職先において、財形貯蓄制度がなければ継続できない。
・転職先において、従前の契約の金融機関と継続できない場合、従前の契約に基づいた新契約に預け替えができる。

財形住宅貯蓄のメリットとデメリット

財形住宅貯蓄は、資産形成の定番の一つですが、以下のような「メリット」と「デメリット」があります。

財形住宅のメリット

◎一般財形と異なり、非課税措置があります。

◎給与天引きで、定期的(毎月・賞与月)に積立ができるので、手間をかけずに、将来の住宅資金を確実に貯められます。

◎所定の要件(継続する1年以上の期間、定期の積立、50万円以上の残高)を満たすと、住宅ローンの一つの選択肢として、長期・低利の「財形持家転貸融資制度」を利用することができます。

|財形持家転貸融資制度|
財形貯蓄制度を利用している勤労者に対し、保有する財形貯蓄残高の10倍(上限4,000万円)までの範囲内で、事業主を通じて、または直接に、住宅を購入・建設・改良(リフォーム)するために必要な資金を融資する制度。

◎勤務先が「財形給付金制度」や「財形基金制度」を導入している場合、勤労者の資産形成に大きな利点があります。

|財形給付金制度|
勤務先(事業主)が財形貯蓄をしている勤労者に、毎年定期的に金銭を拠出することにより、勤労者の財産づくりを一層援助促進する制度。

|財形基金制度|
勤務先(事業主)と財形貯蓄を有する勤労者が「勤労者財産形成基金」を設立して事業主から拠出を受けた金銭を運用し、その元利合計額を勤労者に支給することにより、勤労者の財産づくりを一層援助促進する制度。

財形住宅のデメリット

◎マイホーム(持ち家)の資金づくりを目的としており、目的外解約時にはペナルティーとして課税されます。

◎投資型商品が用意されていないので、インフレ(物価上昇)には対応できず、また高いリターン(運用収益)も期待できず、大きく殖やすのには向いていません。

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