財形制度とは何か?

財形制度とは、正式には「勤労者財産形成促進制度」と言い、国と事業主が勤労者の財産形成と生活安定の促進を援助する制度をいいます。これは、勤労者の「貯蓄の奨励」や「持家の促進」といった財産作りのための努力に対して、国や事業主が援助・協力することを目的としています。

ここでは、多くの勤労者の方に馴染みのある「財形制度」について、簡単にまとめてみました。

目次:コンテンツ構成

財形制度の概要について

勤労者財産形成促進制度(財形制度)は、勤労者財産形成促進法に基づき、勤労者(事業主に雇用される方)が退職後の生活の安定、住宅の取得、その他の財産形成の目的として貯蓄を行い、事業主及び国がそれを援助する制度をいいます。

財形制度の設立

1960年代後半、当時、高度成長期の日本では、勤労者の賃金は上昇傾向にありましたが、一方で貯蓄の保有高や持家比率は高くなく、他の先進諸国と比べても統計的に大きく見劣りしていました。

このような状況の中、フローからストックというスローガンの下、西ドイツ(現・ドイツ連邦共和国)の財形制度を範とし、1971年に制定された「勤労者財産形成促進法(財形法)」に基づいて、資産面の充実を図る促進政策として「財形制度」が作られました。

財形制度の財形法と目的

●勤労者財産形成促進法の構成

・第1章:総則
・第2章:勤労者の貯蓄に関する措置
・第3章:勤労者の持家建設の推進等に関する措置
・第4章:雑則
・第5章:罰則
・附則

●財形制度の目的(第1条)

「この法律は、勤労者の計画的な財産形成を促進することにより、勤労者の生活の安定を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」

財形制度の対象者

財形制度の対象者は、職業の種類を問わず、「事業主に雇用される方(勤労者)」となっています。また、勤労者とは、雇用労働者の全てを含み、会社員だけでなく、団体職員、国家公務員、地方公務員、船員なども含まれます。

一般に財形制度は、勤めている会社等が導入していなければ、いくら利用したいと思っても利用することはできません。そのため、必ずしも全ての勤労者の方が利用できるというものではなく、また自営業者や役員(役員報酬のみの専従)の方は本制度の対象外となっています。

なお、アルバイトやパート、派遣社員の方でも、継続して雇用が見込まれる場合は、積立期間・要件を守って契約を締結すれば、財形貯蓄をすることができます。

財形制度の取扱金融機関

財形制度は、勤めている会社等が所定の手続きを行い、財形制度を取り扱っている金融機関と契約することで行うことができます。

現在、都市銀行や地方銀行、第二地方銀行、信託銀行、ゆうちょ銀行、信用金庫、労働金庫、信用協同組合、農林中央金庫、商工組合中央金庫、農業協同組合・同連合会(JA)、漁業協同組合・同連合会、水産加工業協同組合・同連合会、証券会社、生命保険会社、損害保険会社などが取り扱っています。

財形制度の3本柱について

日本の財形制度は、「財形貯蓄制度」と「財形持家融資制度」と「財形給付金制度・財形基金制度」が3本柱となっています。

財形貯蓄制度とは?

財形貯蓄制度は、事業主の協力を得て、賃金等から天引きで行う、勤労者の自助努力に基づく貯蓄制度をいいます。

現在、「一般財形貯蓄」と「財形年金貯蓄」と「財形住宅貯蓄」の3つがあり、その仕組みは、勤労者がコツコツと貯蓄を行えるように事業主は一定額の給与天引きをし、それを金融機関に払い込むという業務を行い、一方で国は特定の財形貯蓄について一定額まで利子を非課税としています。

・勤労者財産形成貯蓄(一般財形貯蓄)
・勤労者財産形成年金貯蓄(財形年金貯蓄)
・勤労者財産形成住宅貯蓄(財形住宅貯蓄)

※財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、元利合計で550万円(財形年金貯蓄のうち、生命保険・損害保険等の契約については元本385万円)まで利子等に税金がかからない。

財形持家融資制度とは?

財形持家融資制度は、一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄のいずれかを行っている方が利用できる、マイホーム資金(建設、購入、改良)のための融資制度(住宅ローン)をいいます。

●財形持家転貸融資

独立行政法人・勤労者退職金共済機構が財形貯蓄を行っている勤労者に対し、その人の貯蓄残高に応じて、住宅を建設、購入または改良(リフォーム)するための資金を事業主、事業主団体及び福利厚生会社を通じて融資するもの。

●その他の財形融資制度

・財形持家直接融資
-独立行政法人、住宅金融支援機構
-沖縄振興開発金融公庫
・住宅資金の貸付
-公務員の共済組合・その連合会

財形給付金制度・財形基金制度とは?

財形給付金制度と財形基金制度では、勤労者の財産作りを支援する上で、国が税制上の援助を行っています。

●財形給付金制度

事業主が財形貯蓄をしている勤労者に対して、毎年定期的に金銭を拠出することにより、勤労者の財産作りを一層援助・促進する制度。

●財形基金制度

事業主と財形貯蓄を有する勤労者が「勤労者財産形成基金(財形基金)」を設立して、事業主から拠出を受けた金銭を運用し、その元利合計額を勤労者に支給することにより、勤労者の財産作りを一層援助・促進する制度。

財形制度の主なメリットについて

勤労者財産形成促進制度(財形制度)は、1971年に制定されて以来、日本で長く親しまれてきた制度ですが、今日においても、勤労者と事業主の双方において、以下のようなメリットがあります。

勤労者のメリット

◎各々のライフステージにおけるイベントで必要となる資金を、給与天引き(賃金からの控除)により、手間をかけずに着実に貯蓄することができる。

◎財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄を合わせて、元利合計550万円(財形年金貯蓄のうち、郵便貯金、生命保険・損害保険の保険料、生命共済の共済掛金、簡易保険の掛金等に係るものにあっては払込ベースで385万円)から生ずる利子等が非課税とされる。

◎財形年金貯蓄については、年金の支払いが終わるまで非課税措置が継続され、老後生活の安定に役立つ。

◎財形貯蓄の残高に応じた「財形持家融資制度」を利用することができる。

◎財形給付金制度や財形基金制度を採用している企業等においては、その受益者等となる資格が得られる。

事業主のメリット

◎福利厚生の定番の一つで、社内預金制度や社内融資制度に準じた制度を確立することができ、人材の確保や定着などで有利となる。

◎従業員の貯蓄意識を喚起し、生活基盤(家計面)の安定につながるほか、勤労意欲も高まる。

◎事業主側で大きな負担を負うことなく、融資制度の充実を図ることができる。

◎国が促進するものなので、税制上のメリットがある。

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