一般財形貯蓄の仕組みは?

一般財形貯蓄とは、勤労者が事業主の協力を得て、給与から一定額を天引きして行う積立貯蓄をいいます。

事業主を通じて積み立てていく、目的を問わない使途自由な貯蓄で、財形制度を行なっている企業等に勤める勤労者であれば、誰でも行なうことができます。

ここでは、一般財形貯蓄の基本的な仕組みについて、簡単にまとめてみました。

目次:コンテンツ構成

一般財形貯蓄の基本事項について

一般財形貯蓄を理解する上で、まずは基本事項を押さえておきましょう。

一般財形の位置づけ

一般財形貯蓄は、「勤労者財産形成貯蓄」とも言い、「財形年金」や「財形住宅」と共に、勤労者が財形貯蓄取扱機関と契約を締結し、事業主が勤労者に代わって、賃金から天引きする方法により貯蓄を行う制度である「財形貯蓄制度」の一つです。

一般財形の基本的要件

一般財形の基本的要件として、積み立ては事業主による「賃金控除(給与天引き)」と「払い込み代行」によって行い、原則3年以上の期間、定期的(毎月・賞与期)に積み立てることが必要です。

一般財形の利用対象者

一般財形は、会社員や団体職員、国家公務員、地方公務員、船員など、事業主に雇われている「勤労者」の方が、現在、自分の勤務先に「財形貯蓄制度」が導入されている場合に利用することができます。

※自営業者や無職の方は利用できない。
※役員報酬のみの「役員」の方は利用できない(兼務者は利用可)。

一般財形の積立方法

一般財形は、自分で資金を拠出して積み立てるのではなく、毎月の給料や夏・冬等のボーナスから天引きで積み立てます。

一般財形の資金使途

一般財形は、財形年金や財形住宅とは異なり、貯蓄目的の制限はなく、原則自由です。そのため、自動車購入や旅行、結婚、出産、教育などのライフイベントから、病気やケガ、介護、引越しなどの不意の出費まで、幅広い目的に使うことができます。

一般財形の積立期間と払い出し

一般財形は、原則として、3年以上にわたって定期的に積み立てる必要がありますが、貯蓄開始から1年経過した後は、払い出しが自由となっています。また、払い出し(引き出し)の際には、通常、勤務先での申請が必要となり、この時に所定の書類をいくつか提出することになります。

一般財形貯蓄の活用方法について

一般財形貯蓄を始めるにあたっては、勤務先が選定した取扱金融機関の中から、勤労者が貯蓄契約先を決めます。また、毎月の積立については、賃金(給料・賞与)から事業主が天引きし、契約者に代わって取扱金融機関に払込む方法で行います。

一般財形の契約

一般財形は、勤務先に財形貯蓄制度が用意されていて、希望者のみが行うものであり、強制されて行うものではありません。現在、一人で複数の契約が可能で、また貯蓄歴3年以上に限って、勤務先が指定する他の取扱機関への預け替えが認められています。

なお、原則として、積立限度額はありませんが、生命保険3,000万円、郵便貯金1,550万円を限度とするなど、貯蓄商品によっては制限が設けられている場合があります。

一般財形の取扱金融機関

一般財形は、現在、都市銀行や地方銀行、第二地方銀行、信託銀行、ゆうちょ銀行、信用金庫、労働金庫、信用協同組合、農林中央金庫、商工組合中央金庫、農業協同組合・同連合会(JA)、漁業協同組合・同連合会、水産加工業協同組合・同連合会、金融商品取引業者、生命保険会社、損害保険会社などで取り扱われており、実際の利用先は、勤務先が選定したところとなります。

一般財形の対象商品

一般財形の対象商品(積立商品)には、現在、以下のようなものがあり、また利率(金利)については、預け入れる商品によって異なります。

・銀行等の商品
-定期預金、定期貯金など
・信託銀行の商品
-合同運用信託
・証券会社の商品
-公社債、投資信託など
・生命保険会社の商品
-積立保険
・損害保険会社の商品
-積立傷害保険

一般財形の課税措置

一般財形の税金面は、財形年金や財形住宅とは異なり、特に非課税措置はなく、一律20%(国税15%、地方税5%)の源泉分離課税です。また、2013年1月1日から2037年12月31日までは、国税に復興特別所得税(0.315%)が付加されます。

一般財形の解約方法

一般財形の解約方法には、勤務先を通じて解約手続きを行うパターンと、財形貯蓄を行っている取扱金融機関に行って解約手続きを行うパターンがあります。また、解約にあたっては、以下のようなものが必要になり、具体的な手続きや入金時期などは、予め確認しておいた方がよいでしょう。

<解約手続きに必要なもの>

・財形貯蓄の証書(現物)
・印鑑(金融機関に届け出た印)
・払戻金の振込口座番号(入金の場合)
・本人確認資料 他

一般財形貯蓄のメリットとデメリット

一般財形貯蓄は、資産形成の定番の一つですが、以下のような「メリット」と「デメリット」があります。

一般財形のメリット

◎給与天引きで、定期的(毎月・賞与月)に積立ができるので、手間をかけずに確実に貯められます。特に貯蓄が苦手の人にとっては、有効な手段となります。

◎資金使途(目的)が問われず、貯蓄開始から1年経過した後は、払い出しが自由となっています。

◎所定の要件(継続する1年以上の期間、定期の積立、50万円以上の残高)を満たすと、住宅ローンの一つの選択肢として、長期・低利の「財形持家転貸融資制度」を利用することができます。

|財形持家転貸融資制度|
財形貯蓄制度を利用している勤労者に対し、保有する財形貯蓄残高の10倍(上限4,000万円)までの範囲内で、事業主を通じて、または直接に、住宅を購入・建設・改良(リフォーム)するために必要な資金を融資する制度。

◎勤務先が「財形給付金制度」や「財形基金制度」を導入している場合、勤労者の資産形成に大きな利点があります。

|財形給付金制度|
勤務先(事業主)が財形貯蓄をしている勤労者に、毎年定期的に金銭を拠出することにより、勤労者の財産づくりを一層援助促進する制度。

|財形基金制度|
勤務先(事業主)と財形貯蓄を有する勤労者が「勤労者財産形成基金」を設立して事業主から拠出を受けた金銭を運用し、その元利合計額を勤労者に支給することにより、勤労者の財産づくりを一層援助促進する制度。

一般財形のデメリット

◎財形住宅や財形年金と異なり、非課税措置がありません。

◎払い出しの際には、書類の提出など手間がかかります。

◎投資型商品が用意されていないので、インフレ(物価上昇)には対応できず、また高いリターン(運用収益)も期待できず、大きく殖やすのには向いていません。なお、積極的に運用したい方には、「NISA(少額投資非課税制度)」や「iDeCo(確定拠出年金個人型)」といった手段もあります。

一般財形貯蓄、こんな時はどうなる?

一般財形貯蓄では、何らかの理由で状況が変わった場合、以下のような取扱いになります。

払い出しをする場合は?

払出の制限は特にないので、理由(目的)によらず、払出をすることができます。

育児休業等を取得する場合は?

育児休業期間中でも、積立の継続は可能です。ただし、賃金の支払いがない場合は、積立が中断となります。

勤務先が変わった場合は?

転職や出向などによって勤務先が変わった場合、新たな勤務先で財形貯蓄制度が導入されていれば、所定の手続を行うことで、引き続き継続することができます。また、新たな勤務先で同一金融機関の取扱いがない場合も、退職等の日から2年以内に別の金融機関に預け替えて積立を継続することができます。

海外転勤をする場合は?

海外転勤中であっても、国内払いの賃金があれば、そこからの天引きによって積立を継続することができます。

勤労者でなくなった場合は?

退職したり、役員に昇格するなど、勤労者でなくなった場合は、新たな積立はできなくなります。

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