オルタナティブ投資(代替投資)

読み方: おるたなてぃぶとうし(だいたいとうし)
英語: Alternative investments
分類: 概念

オルタナティブ投資(Alternative investments)は、「代替投資」とも呼ばれ、株式や債券などの伝統的な資産とは異なる資産への投資をいいます。

語源である"オルタナティブ(alternative)"には「既存のものに代わる、慣習にとらわれない」といった意味があり、また運用面においては、ポートフォリオに含めることにより、リスク分散効果を高めるとされます。

ここでは、オルタナティブ投資の概要について、簡単にまとめてみました。

目次:コンテンツ構成

オルタナティブ投資の種類

オルタナティブ投資とは、伝統的な投資対象である株式(上場銘柄)や債券と相関性がない(低い)とされる一連の運用対象に投資することをいいます。

現在、その種類には、ヘッジファンドやインフラファンド、プライベート・エクイティ・ファンド、証券化商品、不動産、コモディティ(現物・先物)、デリバティブ(金融派生商品)、保険リンク証券、仮想通貨(暗号資産)などがあります。

オルタナティブ投資の概要

ヘッジファンド

グローバル・マクロやマーケット・ニュートラル、ロング・ショート、イベント・ドリブンなど、様々な取引手法を駆使して、絶対的な収益の追求を目指す私募形式のファンドをいう。

インフラファンド

投資家から資金を集めて、道路や発電所、鉄道、空港、港湾などの社会資本(インフラ)に投資するファンドをいう(一部のインフラファンドは、取引所に上場されている)。

プライベート・エクイティ・ファンド

「PEファンド」とも呼ばれ、投資家から資金を集めて、未上場企業に投資するファンドをいう。具体的には、MBOファンドや買収ファンド、再生ファンド、ベンチャーキャピタル、ターンアラウンドファンドなどがあり、将来的に株式公開や第三者に売却をすることで、キャピタルゲインを獲得することを目的としている。

証券化商品

ローンやリース、不動産など、将来一定の収益が見込める資産を裏付けとして発行される有価証券をいう。具体的には、不動産担保融資の債権を裏付けとして発行される「MBS」、貸付債権や債券などから構成される金銭債権を担保として発行される「CDO」、MBSやCDOに分類されない資産を裏付けとする「ABS(狭義の資産担保証券)」がある。

不動産

土地や建物などの不動産に投資することをいう。具体的には、REIT(不動産投資信託)や投資信託(国内外のREIT等に投資するファンド)、私募ファンド、小口化商品などの不動産関連の投資商品で運用するほかに、実物不動産(現物不動産)で運用(保有)することもできる。

コモディティ

世界の商品取引所などで取引される商品をいう。具体的には、原油や天然ガスなどの「エネルギー」、金や銀、プラチナ、パラジウムなどの「貴金属」、銅やニッケル、アルミニウム、亜鉛、鉛などの「非鉄金属」、トウモロコシや小麦、大豆、コーヒー、粗糖などの「農産物」といったものがある。

デリバティブ

金利や債券、株式、通貨、コモディティなどの原資産から派生した取引の総称をいう。具体的には、先物取引やオプション取引、スワップ取引などがある。

先物取引
将来の売買について、予め現時点で約束する取引。

オプション取引
将来の一定の期日(期間内)に一定の数量を、その時の市場価格に関係なく、予め決められた特定の価格で"買う権利"または"売る権利"を売買する取引。

スワップ取引
等価のキャッシュフローを交換する取引。

|保険リンク証券

保険対象の事故や事象などに関連した証券化商品の総称をいう。具体的には、キャット債(Catastrophe Bond)や担保付再保険・再々保険、ILW(Industry Loss Warranties:インダストリー・ロス・ワランティ)などがある。

|仮想通貨

正式には「暗号資産」と呼ばれ、特定の国家や地域による価値保証のない、また中央銀行などの管理者がいない通貨をいう。代表的なものに、ビットコインやイーサリウム、リップルなどがある。

オルタナティブ投資のメリットとデメリット

オルタナティブ投資は、株式や債券などとの価格連動性(相関性)が低いとされ、具体的には、以下のようなメリットとデメリットが挙げられます。

|オルタナティブ投資のメリット

・株式や債券などの伝統的資産と値動きが異なるため、分散投資を行って全体のリターンの向上を図れる
・投資対象によっては、市場の非効率性が大きいため、より高いリターンを期待できる
ロング(買い持ち)だけでなく、ショート(売り持ち)も可能で、相場の様々な局面で収益を狙える
・投資対象や投資手法の選択肢が豊富で多様な投資が可能である

|オルタナティブ投資のデメリット

・投資対象への馴染みが少なく分かりにくい
・ヘッジファンドや証券化商品など、商品性(仕組み)が非常に複雑なものもある
・価格変動の要因が分かりずらいものもある
・流動性や換金性などが非常に低いものもある
・ベンチマークが存在しないか機能しないものもある
・情報公開が少ない(不十分な)ものもある
・取引コストが非常に高いものもある

オルタナティブ投資の運用手法

オルタナティブ投資は、ヘッジファンドやCTA、投資信託会社、年金基金、政府系ファンドなどで広く行われており、実際の運用にあたっては、様々な戦略を用いたり、異なったリスクを持つ投資対象が組み込まれたりします。

◎オルタナティブ投資の対象は、ローリスクのものからハイリスクのものまで非常に多様であり、投資目的やリスク許容度などに合わせて、自由に選択することができる。

◎従来の伝統的投資では、基本的に「ロング(買い持ち)」だけで、「ショート(売り持ち)」をすることはないが、オルタナティブ投資では先物取引やオプション取引、スワップ取引といったデリバティブを用いて、相場の様々な局面で収益を狙うことができる(株式の場合は、信用取引でショートができる)。

◎市場取引(取引所が運営する市場)では、伝統的資産である株式や債券に加えて、通貨や金利、商品なども取引対象とし、また各々のデリバティブ商品(先物・オプション)も取引対象に加えて、相場の様々な局面で収益を狙うことができる(ヘッジファンドなどでは、アルゴリズムトレードが行われている)。

◎先進国で伝統的資産と言った場合、国内株式、外国株式(先進国)、国内債券、外国債券(先進国)の4つを指すが、オルタナティブ投資では、新興国や開発途上国の株式や債券も対象となり、この場合、投資する国・地域が拡大するほか、高いリータンも狙うことができる(高いリスクもあるが)。

オルタナティブ投資の実践(個人投資家の場合)

オルタナティブ投資は、個人投資家においても、分散投資の一つとして利用可能で、現在、銀行や証券会社、外国為替取引会社、商品先物会社、貴金属会社などで提供される、以下のような商品・サービスを通じて行うことができます。

|不動産

間接投資では、証券取引所に上場されている「REIT(不動産投資信託)」や金融機関で売買できる「投資信託(国内外のREIT等に投資するファンド)」があり、また直接投資では、賃貸物件等の不動産の現物投資(購入)がある。

不動産投資信託(J-REIT)
投資信託(不動産関連のファンド)
・実物不動産(賃貸物件等)

|コモディティ

現物投資では、金や銀、プラチナなどの貴金属(現物資産)の購入があり、また現物投資以外では、商品先物取引やCFD取引、商品ファンド、ETF、投資信託などがある。

プラチナなどの現物
商品先物取引(先物・オプション)
CFD取引(商品CFD)
商品ファンド
・ETF(商品・商品指数)
・投資信託(商品関連に投資するファンド)

|デリバティブ

取引所で取引されている先物・オプション、証券会社で売買できるカバードワラントやETF、投資信託などがある(コモディティの先物・オプションもデリバティブ)。

株価指数先物取引
株価指数オプション取引
・有価証券オプション
カバードワラント
ETF(ブルベア型などのETF)
・投資信託(ブルベア型などのファンド)

|ヘッジファンド

証券会社で売買できる、ヘッジファンドを投資対象とした投資信託がある。

・投資信託(ヘッジファンド関連のファンド)

|インフラファンド

取引所に上場するインフラファンドと証券会社で売買できる投資信託がある。

・インフラファンド(東証上場銘柄)
・投資信託(インフラ関連のファンド)

|外国通貨

外貨預金や外貨MMF、外国為替証拠金取引などで、為替差益や金利収入を狙った、外国通貨(外貨)の売買ができる。

外貨預金
外貨MMF
外国為替証拠金取引(FX)

|仮想通貨(暗号資産)

仮想通貨取引所に口座を開設して、仮想通貨(暗号通貨)を取引(売買)して収益を得る。

・仮想通貨(ビットコイン、イーサリアム、リップル他)

|ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングサービスを提供する会社に登録し、インターネットを通じて資金需要者に資金を貸し付け、金利による収益を得る。

・ソーシャルレンディング

|その他

個人投資家の場合、法人投資家と異なり、投資面の自由度が高いため、下記のようなものも代替投資の対象となりえる。

アンティークコイン(希少コイン)
・美術品(絵画等)
・高級ワイン
・高級腕時計
・スーパーカー 他

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