高額療養費制度とは何か?
高額療養費制度は、公的医療保険における制度の一つで、医療機関や薬局の窓口で支払った金額が、暦月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度をいいます。
通常、重い病気やケガなどで病院等に長期入院したり、治療が長引いたりした場合に、医療費の自己負担額が高額となるのに対して、本制度では、家計の負担を軽減できるように一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻されるというものです。
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高額療養費制度の概要
高額療養費制度では、保険適用される診療に対し、患者が支払った自己負担額が対象となりますが、一方で入院時の食費負担や差額ベッド代、先進医療にかかる費用などは支給の対象外です。また、実際にかかった医療費を暦月単位で軽減する制度のため、月をまたいで治療した場合は自己負担額の合算はできません。
|支給まで期間
高額療養費は、申請後、各医療保険で審査した上で支給されますが、この審査はレセプト(診療報酬の請求書)の確定後に行われるため、受診した月から少なくとも3カ月程度かかります。
|多数回該当
直近の12カ月間に、既に3回以上高額療養費の支給を受けている場合(多数回該当の場合)には、その月の負担の上限額がさらに引き下がります。ただし、70歳以上の方の場合は、「一般」や「低所得者」の区分の方については、多数回該当の適用はありません。
高額療養費制度の自己負担限度額
現在、高額療養費制度の1カ月の自己負担限度額(負担の上限額)は、年齢や年収によって異なります。また、同一の医療機関等における自己負担(院外処方代を含む)では上限額を超えない場合でも、同じ月の複数の医療機関等における自己負担は合算することができます。
|70歳以上の方の場合
1カ月の負担の上限額だけでなく、外来だけの上限額も設けられています(現役並みは、1カ月の負担の上限額だけ)。
適用区分 | 1カ月の負担の上限額 | 外来(個人毎) |
---|---|
現役並み | 年収約1,160万円~ 252,600円+(医療費-842,000円)×1% 年収約770~約1,160万円 167,400円+(医療費-558,000円)×1% 年収約370~約770万円 80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
一般 | 年収156~約370万円 57,600円 | 18,000円 |
住民税非課税等 | 24,600円/15,000円 | 8,000円 |
|70歳未満の方の場合
1カ月の負担の上限額だけです。
適用区分 | 1カ月の負担の上限額 |
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区分ア | 年収約1,160万円~ 252,600円+(医療費-842,000円)×1% |
区分イ | 年収約770~約1,160万円 167,400円+(医療費-558,000円)×1% |
区分ウ | 年収約370~約770万円 80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
区分エ | ~年収約370万円 57,600円 |
区分オ | 住民税非課税等 35,400円 |
高額療養費制度の支給申請
高額療養費制度では、加入している公的医療保険の担当窓口に、高額療養費の支給申請書を提出または郵送することで支給が受けられます。また、その際に、病院などの領収書の添付を求められる場合もあります。
◎加入の医療保険によっては、「支給対象となります」と支給申請を勧めてくれたり、大手企業の健康保険組合等では自動的に高額療養費を口座に振り込んでくれたりするところもある。
◎高額療養費の支給を受ける権利の消滅時効は、診療を受けた月の翌月の初日から2年となっている(過去に遡って支給申請することも可能)。
高額療養費制度の世帯合算
一人の一回分の窓口負担では、高額療養費の支給対象とはならなくても、複数の受診や同じ世帯にいる他の方(同じ医療保険に加入している方に限る)の受診について、窓口でそれぞれ支払った自己負担額を1カ月(暦月)単位で合算することができます。
◎世帯の合算額が一定額を超えた場合には、超えた分が高額療養費の支給対象となる。
◎70歳未満の方の受診については、2万1千円以上の自己負担のみ合算される。
高額療養費制度の入院時の費用軽減
高額療養費制度の入院時の費用軽減を行うには、加入する医療保険から事前に「限度額適用認定証(住民税非課税以外の方)」、または「限度額適用認定・標準負担額減額認定証(住民税非課税の方)」の交付を受け、医療機関の窓口で、これらの認定証を提示します。
これにより、医療機関の窓口での支払いを負担の上限額までに留めることができるため、一度に用意する費用が少なくて済みます。
◎高額療養費が医療機関や薬局に直接支払われるため、加入する医療保険に対して、事後に高額療養費の支給申請をする手間が省ける。
◎70歳以上の方は、所得区分の認定証がなくても、自動的に窓口での支払いが負担の上限額までに留められる(低所得者の区分の適用を受けるためには認定証が必要)。