抵当証券
抵当証券は、抵当証券法に基づいて、不動産を担保(抵当)とした貸付債権を証券化し、小口で運用できるようにした金融商品をいいます。もう少し厳密に言えば、不動産を担保に融資を行った抵当権者が、債務者の同意を得た上で法務局に申請し、発行してもらう有価証券のことです。
その歴史は意外と古く、1931年に既に抵当証券法に基づく抵当権付き債権の流動化が認められており、今日の債権流動化のはしりとも言えるものですが、昨今では、不動産を対象とした多様な証券化商品がある中、「過去の商品」となっています。
目次:コンテンツ構成
抵当証券の発行(法改正前と法改正後)
抵当証券は、2007年の金融商品取引法の施行に伴う、「抵当証券業の規制等に関する法律(抵当証券業法)」の廃止により、その発行の仕組みと状況が大きく変わりました。
抵当証券の発行の仕組み(法改正前)
抵当証券は、2007年に「抵当証券業の規制等に関する法律(抵当証券業法)」が廃止される前、内閣総理大臣の登録を受けた法人である抵当証券会社が取り扱っており、その発行の仕組みは以下のようになっていました。
1.抵当証券会社に、主に中小企業者や個人事業主などから不動産融資の申込みがあり、融資を実行する。
2.抵当証券会社は、融資を実行した先である借入者(債務者)に対する「不動産融資の貸付債権」と、それを担保する「不動産の抵当権」とを一体として、債務者の同意を得て登記申請を行い、法務局から「抵当証券の原券」を交付してもらう。
3.交付された抵当証券の原券は、抵当証券保管機構に預けることが義務づけられており、抵当証券保管機構に原券を預けて「保管証」を発行してもらう。
4.抵当証券会社は、抵当証券を小口化して一般投資家(購入者)に販売し、一方で購入者は、抵当証券会社が発行する「取引証(モーゲージ証書)」と抵当証券保管機構が発行する「保管証」を受け取る。
5.抵当証券会社は、債務者が定期的に支払う返済金の中から、購入者に元利金を支払う。
抵当証券の発行の仕組み(法改正後)
2007年に施行された金融商品取引法では、抵当証券が「有価証券」に指定され、また証券業を営む会社であれば、抵当証券を自由に取り扱えるようになりました。こうした制度変更を受け、抵当証券会社の廃業が相次ぎ、2012年に抵当証券を保管する抵当証券保管機構も解散しました。
現在、抵当証券は、法律上は存在しますが、銀行や証券会社などでは取扱っておらず、金融業界では「過去の商品」となっています(ネットで検索しても販売先を見つけられず)。
抵当証券の基本事項(過去の商品)
抵当証券は、抵当証券法に基づき、土地や建物などの抵当権付き貸付債権を証券化したもので、2000年代まで世間一般に販売されていた頃は、同期間の定期預金などより利回りが高いことが多ったです。
昨今では、抵当証券会社は業態として存在せず、また銀行や証券会社でも取り扱っていないので、「抵当証券」の儲け話を聞いた時は注意した方がよいです。
過去の取扱機関 | 抵当証券会社、銀行、証券会社 他 |
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リターン | 利息 |
リスク | 信用リスク(抵当証券会社の倒産) -元利金は抵当証券会社が保証 -過去に抵当証券会社の倒産あり(保証なし) |
関連マーケット | 長期金融市場 |
預入金額 | 50万円以上が多い |
預入期間 | 6カ月、1年、2年、3年、5年など |
金利種類 | 固定金利(発行時に金利決定) |
利払い | 半年毎に利払い |
換金性 | いつでも可能 -中途解約補償料を徴収されるのが一般的 -中途償還されることもあり、条件確認は必要 |
税金 | 源泉分離課税 |
保護制度 | 預金保険制度の対象外 |