ポートフォリオ

英語: Portfolio
分類: 運用管理

ポートフォリオは、基本的な意味として、「書類カバン」や「折りカバン」、「携帯用書類入れ」などをいいます。

世間一般で広く使われる用語で、元々は、英語の"Portfolio"の「紙ばさみ」に由来し、それが転じて「ひとかたまりの意味や目的を持った書類の束」となり、今日では、金融用語やビジネス用語、クリエイティブ用語、教育用語などで広く使われています。

ここでは、多様な意味を持つ「ポートフォリオ」について、簡単にまとめてみました。

目次:コンテンツ構成

金融用語のポートフォリオ

ポートフォリオは、金融用語では、「有価証券一覧表」や「資産構成(金融資産一覧)」などをいいます。その昔、海外の金融機関で有価証券を「紙ばさみ」に挟んで保管・携帯したことに由来し、それが転じて、今日の意味で使われるようになったそうです。

また、1970年代に「モダンポートフォリオ理論」というリスク管理を数値計算で分析する投資理論が形成され、その後、分散投資を計算するソフトウェアも開発され、投資分野(資産運用)で実践的に使われるようになり、その概念が広く普及するようになりました。

ポートフォリオの概念

ポートフォリオは、個人や金融機関、年金基金、投資信託会社、ヘッジファンド、政府系投資会社などで広く用いられる概念で、通常、「有価証券一覧表」や「資産構成(金融資産一覧)」などの意味で使われるほか、投資対象別に「株式ポートフォリオ」や「債券ポートフォリオ」、「通貨ポートフィリオ」などの呼称も使われます。

一般にポートフォリオを構成する対象資産には、短期金融資産や債券、株式、ファンド、商品、通貨、不動産、デリバティブなど多様なものがあります。

<ポートフォリオの呼称が入る金融用語>

マーケット・ポートフォリオ
リスク証券全体の市場価値総額に対する、各リスク証券の市場価値総額の比率をウエイトとするポートフォリオ。

ラダー型ポートフォリオ
債券ポートフォリオを構築する際に、短期債から長期債まで、残存期間の異なる債券に、ほぼ同額ずつ投資するもの。

個人のポートフォリオ運用

ポートフォリオは、個人の資産運用においては、運用資産(保有資産)の構成状況(組み合わせ)のことを意味し、その中身は、預貯金や債券、株式、投信、ETF、ETN、REIT、外貨預金、FX、CFD、商品先物、金、プラチナなど実に様々なもので構成することができます。

一般にポートフォリオの構成にあたっては、自分のリスク許容度を基に、異なるリスクリターンのものに分散させると共に、時間的な分散にも注意する必要があります。また、実際の運用面では、全体の収益性や換金性を考慮して金融商品をうまく組み合わせ、いかにリスクを管理しながら運用するかがポイントになります。

◎商品面については、運用対象を一つに集中させず、ある程度分散させてリスク回避を図ると共に、自分が目標とする年間のリターンとそれに見合ったリスクのバランスをうまく取る。

◎時間面については、収益の回収期間を分けることで、定期預金の利息、公社債の利息、投資信託の分配金や売却益、REITの分配金や売却益、株式の配当金や売却益などのリターンをうまく取り込む。

ビジネス用語のポートフォリオ

ポートフォリオは、ビジネス用語では、事業会社(一般企業)において、経営やマーケティングで事業構成を意味する「事業ポートフォリオ」や製品構成を意味する「製品ポートフォリオ」といった用語がよく使われます。

また、ベンチャーキャピタルや不動産投資信託(不動産投資法人)などの投資ビジネスにおいては、「投資先一覧」の意味で使われます。

事業ポートフォリオ
企業において、各事業における収益性や安全性、成長性などを一覧できるものをいう。事業毎の個別決定と会社全体の最適決定の二つのレベルによって構成される。

製品ポートフォリオ
企業において、各製品における収益性や安全性、成長性などを一覧できるものをいう。変わりゆく市場環境の中で、重視すべき製品や撤退すべき製品などを明確にし、適宜見直す必要がある。

クリエイティブ用語のポートフォリオ

ポートフォリオは、クリエイティブ用語では、「個人の作品集」のことをいいます。これは、デザイナーやプランナー、楽曲制作者、画家、写真家、建築家などのクリエイターが、就職や転職、コンペなどの仕事獲得において、自分の職種(専門分野)における実績や力量などを評価してもらうために作成する資料を指します。

また、その他に、プロモデルなどが、コンポジットカード(モデル名や顔写真、連絡先、サイズなどを記したもの)と共に、自分の売り込みのために欠かせない、自分の写真をまとめたものも「ポートフォリオ」と言います。

一般に「作品集」を意味するポートフォリオは、紙ベースやデジタルデータ、専用ウェブサイトなどで、自分の作品を保管し、目的や意図に応じて適宜選択していったものであり、通常、ビジネスの相手先(クライアント)に見せて、自分のスキルや実績などをアピールするために使われます。

なお、昨今では、簡単に作品集が作れる「ポートフォリオ作成サービス」も提供されています。

教育用語のポートフォリオ

ポートフォリオは、教育用語では、「学習過程の各種収集物」や「ポートフォリオ評価法」、「ポートフォリオ学習」、「ポートフォリオ教授法」などをいいます。

教育における「ポートフォリオ」の概念は、その昔、ロンドン大学のS=クラーク教授を中心に考案され、1980年代後半に英国や米国などで取り入れられ、1990年代後半に日本に入ってきました。

一般にポートフォリオ評価法は、従来の科目テストや知力テストなどで測定できない「個人能力の総合的な学習評価法(質的評価方法)」とされています。

具体的には、学習過程で生徒が残したレポートや試験用紙、提出課題、活動の様子を記録した写真・動画などを収集し、また系統的に選択して、教師と共に生徒自身も自己評価を行い、ステップアップしていくというものになっています。

なお、この手法は、昨今では、学校教育だけではなく、自己啓発や専門研修など、様々な教育分野でも取り入れられています。