ボルカールール

英語名: Volcker Rule
分類: 米国

ボルカールールは、2010年7月に成立したアメリカ合衆国の「金融規制改革法(ドット・フランク法)」に盛り込まれた条項(金融規制策)をいいます。これは、リーマン・ショックを発端とした世界金融危機を受け、ウォール街の安定を回復する手段として、オバマ大統領の経済財政諮問会議議長だったポール・ボルカー元FRB議長らが提唱したもので、米国の商業銀行に対して、ヘッジファンド等への出資を禁止したり、自己資金による高リスク商品への投資などを制限するものとなっています。

一般にボルカールールは、米国の銀行(預金機関)やその関連機関による過剰なリスクテイクを制限するという重要な目的があり、本ルールによって、ウォール街でのトレーディングに対する米国政府の監視が強化されました。

ボルカールールの施行

当初のボルカールールは、2013年12月10日に公表され、同日にFRB(連邦準備理事会)、FDIC(連邦預金保険公社)、OCC(通貨監督庁)、SEC(証券取引委員会)、CFTC(商品先物取引委員会)の五機関すべてが承認しました(2014年4月1日から施行、順守期限は2015年7月21日)。

<当初のボルカールールの概要>

●自己勘定取引

銀行が有価証券、金融派生商品、商品先物・オプションの短期的な自己勘定取引を行うことを禁止(例外項目として、引受業務、マーケットメーキング、ヘッジが設けられている)。

●ファンド

銀行が個々のヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンドの総資産の3%以上の出資を行うことを禁止。

●国債

適用除外範囲は拡大(外国国債については、米国債よりも規制が多いものの取引は可能)。

●経営陣

銀行の経営陣は、規制を順守するために適切なプログラムを社内で実施していることを証明。

●外国銀行

外国銀行は、リスクの所在が米国外であることを条件に、自己勘定取引は今後も容認(米国機関との取引については、特定の状況に限り認めることで安全性強化を図る)。

ボルカールールの改定(ボルカー2.0)

ボルカールールは、2017年に発足したトランプ政権において、施行以来、同規則の緩和(ルールを簡素化し、金融機関への過度な負担の軽減)を求めてきたウォール街の意をくんで、ドット・フランク法の一部を見直す新法の「経済成長・規制緩和・消費者保護法(Economic Growth, Regulatory Relief, and Consumer Protection Act)」が2018年5月に成立しました。

その後、ボルカールールの修正案(緩和案)が検討され、2019年10月8日に五つの監督当局の承認が完了(最後はFRBが承認)し、2020年1月1日付で発効することになりました(銀行は順守までにさらに1年間の猶予を与えられ、2021年初めに全面的に発効予定)。今回の改訂(ボルカー2.0)では、禁止取引に関する情報を明瞭化し、違反を恐れずに取引を銀行に促すことを目指しています。

<ボルカー2.0の概要(改定内容)>

●銀行のコンプライアンス要件をトレーディングの規模に応じたものに調整し、監督当局に提出する報告を簡素化した。

●トレーディング勘定の定義を見直し、例外規定をさらに明確化し、具体的には、60日以上の期間で保有する金融商品は「短期的な取引意図の柱」ではないとする"みなし規定"を設定することで、より銀行業務の実態に即した運用を可能とした。

●外国銀行が米国外のみで行う自己勘定取引を許容する条件として、旧ルールでは厳格な要件を満たす必要があったが、一部の要件を削除した。

●銀行の引受取引やマーケットメイクは、従来のボルカールールの対象ファンドの保有および資金提供禁止規定の例外とされているが、今回の改定では、銀行が対象ファンドの組成やオファーを行わない場合は、総ファンドリミットや資本控除の要件を適用しないなどの要件緩和が行われた。