ストラクチャードファイナンス

英語: Structured Finance
分類: ファイナンス

ストラクチャードファイナンス(Structured Finance)は、日本語で「仕組み金融」とも訳され、企業の事業活動の特定部分に着目し、何らかの仕組みを構築して行なうファイナンス手法をいいます。

元々は、金融の自由化で先行する欧米で生み出されたもので、日本においては、バブル崩壊後の1990年代後半以降、外資系金融機関が商機と捉えて参入したことで普及し、今日では、大手金融機関など国内勢も含め、案件獲得を競っています。

ここでは、ストラクチャードファイナンスの概要について、簡単にまとめてみました。

目次:コンテンツ構成

ストラクチャードファイナンスの特色

ストラクチャードファイナンスは、明確な定義は特にありませんが、従来の株式・債券・ローン等の伝統的な資金調達手段にとどまらず、取引上の仕組み(Structure)を工夫することで組成される新たな金融商品によって、資金調達者と資金提供者とを仲介する高度なファイナンススキームとなっています。

◎原則として、個々の案件ごとに仕組みを構築する(オーダーメイドである)ため、その手法は多様である。

◎通常の借入や増資などによる資金調達とは異なり、企業本体の信用力から特定の資産や事業の価値を切り離して、それに基づいて資金を調達する手法である。

◎返済の財源は、当該事業等の収益のみであり、担保は当該資産や権利などとなる。

ストラクチャードファイナンスの種類

ストラクチャードファイナンスは、企業(顧客)の財務状況やニーズに応じて、不動産流動化や債権流動化、プロジェクトファイナンス、アセットファイナンス、LBOファイナンス、MBOファイナンス、DIPファイナンスなどが代表例として挙げられます。

プロジェクトファイナンス

プロジェクトファイナンスは、ある特定のプロジェクトに対して行う融資で、その返済原資を対象となるプロジェクトのキャッシュフローに限定したものをいいます。

通常、必要資金額が巨額になるため、シンジケートローンの形態がとられ、また対象となる代表的事業として、エネルギー資源開発事業や金属資源開発事業、各種発電事業、インフラ事業などが挙げられます。

アセットファイナンス

アセットファイナンスは、不動産や動産、債権、知的財産権などの特定の資産の信用力に基づいて、当該資産から生じるキャッシュフローを返済原資として資金調達を行う金融スキームをいいます。

具体的には、ABS(Asset Backed Security)やABCP(Asset-Backed Commercial Paper)、ABL(Asset Based Lending)、航空機ファイナンス、船舶ファイナンスなどが挙げられます。

|LBOファイナンス

LBOファイナンスは、M&A(Mergers and Acquisitions)に関する資金調達の一種で、M&Aの買収企業が、買収企業自身の信用力ではなく、買収対象企業(被買収企業)の信用力をもとに資金調達を行う金融スキームをいいます。

LBO:Leveraged Buyout(レバレッジド・バイアウト)の略。

|MBOファイナンス

MBOファイナンスは、企業の経営陣がファンドや金融機関などと協力して、企業の所有者(オーナーや株主)から企業を買収して事業を承継する金融スキームをいいます。例えば、上場企業の非公開化やオーナー企業の事業承継などでよく利用されます。

MBO:Management Buyout(マネジメント・バイアウト)の略。

|DIPファイナンス

DIPファイナンスは、民事再生法や会社更生法など、事業再生の手続きに入った企業に対して行う融資の総称をいいます。通常、再生会社等の事業から生まれるキャッシュフローにより返済を受けることを前提としています。

※ DIP:"Debtor In Possession"の略で、「占有を継続する債務者」という意味。

ストラクチャードファイナンスのメリット

多様な事業を展開する大手企業などは、ストラクチャードファイナンスを利用することによって、市場リスクや信用リスクなどを効率的にコントロールしたり、移転したりすることができます。

例えば、企業の特定資産の証券化を行う場合、企業の貸借対照表(B/S)から、その資産を切り離す(SPC等に移転する)ことで、当該企業の信用力から独立した「資産そのものの信用力」で評価が可能となります。また、それについて格付けを取得した場合、企業本来の信用力よりも上位の格付けを得ることも可能となります。

◎利用する企業側では、資金調達手段の多様化や効率化、オフバランス化によるB/Sの圧縮、ROEや自己資本比率の改善など財務面のメリットがある。

◎提供する金融機関側では、多様なファイナンススキームを提供することができ、非常に付加価値(収益性)の高い業務(案件)となっている。

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