ギグエコノミー

英語: Gig Economy
分類: 経済

ギグエコノミー(Gig Economy)は、インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済形態をいいます。

2015年頃から米国のメディアで頻繁に使われるようになった用語で、ネット仲介で配車サービスの運転手になったり、ネット経由で企業からデザインやサイト制作、コンテンツ制作、便利屋サービスなどを受注したりというように、非正規労働で一回一回仕事を請け負う就業形態の広がりを指します。

ここでは、ネット時代に注目される「ギグエコノミー」について、簡単にまとめてみました。

目次:コンテンツ構成

ギグエコノミーの概念

ギグエコノミーの「ギグ(gig)」とは、元々はジャズやロックなどで、それほど親しいわけではないミュージシャン同士が、音合わせを兼ねて、その場限りの演奏(単発ライブ)を試しにやってみることを意味しました。

それが転じて、インターネットを通じて単発の仕事を請け負うアドホックな働き方や経済形態を「ギグエコノミー(Gig Economy)」と称するようになりました。

ギグエコノミーの概要

一般にギグエコノミーは、個人の働き方が多様化した一つの形態であり、現在、明確な定義はありませんが、いくつかの考え方があります。

例えば、発祥地である米国の人材業界専門メディア「Staffing Industry Analysts(SIA)」では、広義の「ギグワーカー」として、「直用の臨時労働者」「ヒューマンクラウド」「SOW(専門)コンサルタント」「個人事業主」「派遣労働者」の5つの形態が含まれるとしています。

ギグエコノミーの発展と仕組み

ギグエコノミーが発展してきた背景には、ネット上でプラットフォームを提供する仲介事業者の台頭と、多彩な働き方に対する労働者(ギグワーカー)側のニーズがありました。

具体的には、IT技術を活用して、専門のサイトやアプリで、発注者側(企業・個人等)の需要とギグワーカーをマッチングし、供給を最適化する仕組みがカギとなっています。

仲介事業者

仲介事業者は、プラットフォーム提供者であり、営業先の開拓や仕事のマッチング以外にも、バックグラウンドチェックや身元保証、仕事の実績紹介、コミュニケーション面の支援、売掛金の回収代行、報酬の支払いに至るまで、各プロセスにおける業務の代行や支援をします。

<米国の仲介事業者の代表例>

・UBER(ウーバー):配車・宅配サービス
・TaskRabbit(タスクラビット):便利屋サービス
・Airbnb(エアビーアンドビー):宿泊施設仲介
・BreezeWorks:ビジネス管理アプリ
・Amazon Home Services:家まわりのメンテナンスサービス

労働者(ギグワーカー)

労働者(ギグワーカー)は、仕事の仲介事業者のサービス(プラットフォーム)に登録し、働くことが可能な内容(スキル・専門性)や日時、場所などを登録し、仕事を受注します。

発注者(企業・個人等)

発注者(企業・個人等)は、様々な仲介事業者が提供するサービス(プラットフォーム)の中から、自分が利用したい業務内容を選択し、仕事を発注します。

ギグエコノミーの恩恵と課題

ギグエコノミーは、労働者と発注者の双方に恩恵をもたらす一方で、以下のような課題もあります。

ギグエコノミーの恩恵

◎労働者側には、特定の組織に縛られることなく仕事を見つけるのを容易にし、働き方に自由と柔軟性をもたらす。また、企業等の従業員で副業が可能な場合、自分の能力次第で副収入を得られる可能性がある。

◎発注者側には、仲介事業者のプラットフォームを利用することで、多彩な人材の中から最適な人に仕事を依頼することができる。その際に従業員の雇用で発生する固定費を抑えられるほか、人材育成にかかる時間やコストの削減も可能となる。

ギグエコノミーの課題

◎労働者側には、雇用契約の曖昧さや安定した待遇、労働者保護の仕組みなどで問題がある。また、専門能力の優劣により、収入面や受注面において大きな格差も生じる(競争原理が働くため、有能な人に仕事が集中する)。

◎発注者側には、依頼する仕事において、人材面での見極めが大きなカギとなり、時としてトラブルが発生することもある(仲介事業者の提供するバックグラウンドチェックや身元保証などは完璧ではない)。

ギグエコノミーとシェアリングエコノミーの違い

ギグエコノミーと似たような概念として、「シェアリングエコノミー」があります。

どちらもインターネットの発展により、経済社会の中で生まれたもので、ギグエコノミーがネットを活用して「ヒト(人材)」を共有するという概念なのに対して、シェアリングエコノミーはネットを活用して「モノ」を共有するという概念になっています。

ちなみに、ギグエコノミーを別の側面から捉えた「クラウドソーシング」という概念もあり、これは企業側から見たアウトソーシング手段の一つで、ネット上で不特定多数の人材に対して業務内容や報酬などを提示して仕事を発注する手法をいいます。

ギグエコノミーについて

ギグエコノミーは、個人の専門性や能力、スキルに着目し、発注者(企業・個人等)と労働者(ギグワーカー)が単発で仕事を受発注することで成り立っています。

シェアリングエコノミーについて

シェアリングエコノミーは、物やサービス、場所などを、多くの人と共有・交換して利用するという、効率的な仕組みで成り立っています。

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