MSワラント
読み方: | えむえすわらんと |
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英語: | Moving Strike Warrant |
分類: | ファイナンス |
MSワラントは、「Moving Strike Warrant(ムービング・ストライク・ワラント)」の略で、日本語では「行使価額修正条項付新株予約権」と言います。
企業の資金調達手法の一つで、具体的には、行使価格が修正される条件の付いた新株予約権であり、通常の新株予約権とは異なり、行使価額が行使の都度修正されるように設計されており、また引受先は常に時価より安い価格で株式を取得できるようになっています。
ここでは、MSワラントの概要について、簡単にまとめてみました。
目次:コンテンツ構成
MSワラントの発行
MSワラントは、株式市場において、中小規模の上場企業が資金調達を行う際の手法の一つとして利用されており、ほとんどの場合、証券会社やファンドなどを割当先(引受先)とした「第三者割当」で発行されます。
・株価の変動に応じて、行使される新株数に増減はない
・株価の変動に応じて、行使時の資金調達総額が変化する
・新株予約権であるので、転換時に資金調達をする
MSワラントの仕組みと特色
MSワラントは、株価と連動して行使価格が修正される仕組みなので、取得時に株価が上昇しようと下落しようと、行使価格は修正されるため、引受先は損することなく株式を取得することができます。
一般に行使価額の修正方法については、新株予約権の行使請求日前日の株価の90%から93%程度とするものが多いです(行使する引受先は前日比7%から10%程度のディスカウントした価格で新株を購入することができる)。
<MSワラントの特色>
・行使価額が株価によって修正されるため、新株予約権の行使が円滑に進むことが期待される
・資金調達額は変動するが、行使価額は下限が設定される一方で、上限は設定されないため、株価上昇時には調達額が増大することになる
MSワラントの付帯条項
MSワラントは、事業進捗や資金需要、資本政策などに合わせて柔軟な設計が可能であり、実際の発行にあたっては、発行企業が割当先に対して、以下のような付帯条項を付与するケースが多いです。
・行使に関わる条項(行使指示条項、行使停止条項、行使許可条項)
・発行企業による取得条項
・MSワラント保有者による取得請求条項
なお、調査機関が過去の発行状況を分析したところ、発行企業がワラントの行使を強くコントロールできる条項を付与するケースが多かったとのことです。
MSワラントの問題点
MSワラントは、昨今、新株予約権のデメリットを補う資金調達手法として定着しましたが、一方でMSワラントの発行後に株価が大きく下落するケースもあり、以下のような問題点が指摘されています。
◎既存株主にとっては、株式発行数が増加することによる「株式の希薄化」や、引受先のリスクヘッジの空売りによる「株価の下落」などが発生し、短期的にはメリットがない(長期的には、資金調達が事業拡大につながればメリットはあり)。
◎MSワラントの引受者は、取得時のディスカウントによりキャピタルゲインを得る可能性が極めて高く、実質的には有利発行に該当しているのではないかという問題点がある(規制は強化されてきているが、投資家間の不公平感は解消されず)。
◎リスクが高く、収益性が低く、財務の健全性が低い企業が、株価の高いタイミングでMSワラントを発行することがあり、こういったケースでは発行後の株価は当然下落する(過去に実際に起こっており、また今後も起こり、ゾンビ企業の退出を遅らせる)。