イスラム金融

読み方: いすらむきんゆう
英語: Islamic finance
分類: イスラム金融

イスラム金融は、イスラム法(シャリア)に適った金融取引の総称をいいます。

元々は、ムスリム(イスラム教徒)が教義に従い生活するために考え出されたもので、その取引構造面において、金利という概念を用いない点と、取引相手等の当事者が教義に反する事業(豚肉・アルコール・武器・ギャンブル等)に関わっていない点が大きな特徴となっています。

ここでは、イスラム金融の概要について、簡単にまとめてみました。

目次:コンテンツ構成

イスラム金融の発展

イスラム金融は、1990年代半ば以降、資本市場取引が成長するのに伴い、急速に発展しました。

昨今、イスラム金融は、世界的なムスリムの人口増加やイスラム国家の経済成長(資金需要の急増)、オイルマネーの流入などにより、その市場規模は急速に拡大(成長)しており、世界の金融関係者の間で大きく注目されています。

イスラム金融の利用者と市場

イスラム金融は、ムスリムだけが利用するものではなく、非ムスリムも広く利用しています。

現在、その市場は、東南アジアや中東、北アフリカなど広範囲に渡っており、その中でも、マレーシアやバーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)などが先進国となっています。

また、世界の国際金融センターであるシンガポールやロンドンなどでも、イスラム金融の取組みを積極化しています。

イスラム金融と金利

コーラン(教典)には、お金を他者に渡すだけで殖えて戻ってくる金利(利息)を指す「リバー」を禁じる記述が随所にあり、イスラム金融では、利息が禁止されています。

その理由には複数の説がありますが、最も主要な論点として、「利息は搾取である(貸す資金のある社会的強者が借りる必要のある社会的弱者から元本以上のものを剥ぎ取るのは、公平・平等を重視するイスラム社会において正当化されない)」という考え方があります。

また、その他にも、「利息は不労所得であるから不可」という考え方もあります。

イスラム金融の商品

イスラム金融の商品は、シャリア・コンプライアント(シャリア適格)であることが基本要件となっています。また、金利相当部分が「リバー」と見なされないようにするために、その対応スキームとして、商品売買、事業活動への出資、投資など実体を伴う取引の組み込み、配当や売買差益(商品取引差益)などで収益を代替しています。

・預金
・ローン(住宅、自動車等)
・保険
スクーク(債券)
・投資ファンド(株式、債券、不動産、ヘッジファンド等)
商業金融貿易金融プロジェクトファイナンス 他

イスラム金融のスキーム

イスラム金融の収益(利益)を構築するために、以下のようなスキーム(仕組み)が用いられています。また、利益の概念については、インタレストレート(利子率)という言葉は用いられず、その代わりに「プロフィットレート(利益率)」や「レート・オブ・リターン(利回り)」といった言葉が用いられます。

商品取引等を介在するスキーム

ムラバハイスティスナイジャラ 他

投資・損益分配のスキーム

ムダラバムシャラカ 他

イスラム金融の提供機関

イスラム金融は、イスラム圏の地場系金融機関だけでなく、国際的金融機関なども担い手となっており、その形態には「専業」と「兼業」の二つがあります。

地場系金融機関

・専業:独立機関、子会社方式
・兼業:ウインドー方式(窓口を設け、業務の一つとしてサービス提供)

国際的金融機関

・専業:子会社方式
・兼業:ウインドー方式(窓口を設け、業務の一つとしてサービス提供)

イスラム金融の国際機関

イスラム金融が世界的に広がる(グローバル化する)中、国際的な視点でイスラム金融を育成・支援していくなどの目的で、以下のような機関が設立されています。

イスラム金融サービス委員会

略称は「IFSB」、2002年に設立(マレーシア)。各国金融監督当局の諸施策のコーディネーション、金融機関経営や市場インフラ整備に係る検討など。

国際イスラム金融市場

略称は「IIFM」、2002年に設立(バーレーン)。市場インフラの整備など。

イスラム金融機関会計監査機構

略称は「AAOIFI」、1991年に設立(バーレーン)。会計監査基準の制定など。

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