ミンスキー・モーメント

英語名: Minsky moment
分類: 概念

ミンスキー・モーメント(ミンスキーの瞬間)は、投資家が保有するあまり投機的でないポジションさえも債務支払のために売却する必要に迫られ、マーケットで価格下落スパイラルと深刻な貨幣需要が生じる瞬間をいいます。これは、バブル的な信用(債務)膨張に支えられていた経済において、長く隠れていたリスク(問題)が突然顕在化し、慌てふためいた投資家による資産の投げ売りがマーケットの暴落を誘発する瞬間を指し、例えば、世界的金融危機として知られるサブプライム・ショックは「ミンスキー型危機(ミンスキー・クライシス)」と論じられることもあります。ちなみに、その呼称は、米国の経済学者のハイマン・ミンスキー(Hyman Philip Minsky:1919/9/23-1996/10/24)の名前にちなんだもので、1998年のロシア財政危機を説明する際に、米国のエコノミストのポール・マカリー(当時PIMCO在籍)によって造り出されたそうです。

ハイマン・ミンスキーの「金融不安定性仮説(FIH:Financial In-stability Hypothesis)」は、金融危機を論じる上で欠くことのできない理論(仮説)として知られ、資本主義経済が内生的な運動の結果として、流動性危機を惹起し、深刻な負債デフレに陥ることを示唆しています。この理論において、ミンスキーは、金融契約を「ヘッジ金融(通常のキャシュフローで債務の支払いが元利分とも可能な状態)」 「投機的金融(元本返済は不可だが金利分は支払える状態)」 「ポンツィ金融(通常のキャシュフローでは金利分すら支払えない状態)」の三形態に分類し、景気が拡張していく中で肯定的な信用履歴が積み上げられていくと、貸し手はより問題のある金融契約をも受容するようになり、それが限界まで達すると、各経済主体のバランスシートひいては経済全体に占める投機的金融やポンツィ金融の比率が増大し、金融構造が脆弱化することで金融危機が生じるとしています。

一般にミンスキー・モーメントは、投資家が過剰な投機で生じた債務スパイラルにより、深刻なキャッシュフロー問題を抱えるポイントであり、長い繁栄と借金による投機を促す投資価値の増大の後にやって来るとされます。また、このポイントにおいては、どのカウンターパーティー(金融取引参加者)も適切な値を付けることができず、各種資産の投げ売りが一斉に始まり、その結果として、資産価格が大暴落すると共に、市場流動性が急低下することになります。そして、それが進行すると、債務者の破綻(不良債権の急増)、金融機関による信用収縮、失業者の増大といったバブル崩壊過程に特有の危機が続くことになります。