ロシア危機

読み方: ろしあきき
英語: Russian Crisis
分類: 金融危機

ロシア危機は、ロシア連邦で発生した、通貨暴落や財政問題などの金融危機をいいます。

1990年代と2010年代に起こっており、その発生要因はそれぞれ異なりますが、ロシア経済の構造面として天然資源の輸出依存体質があり、また外部環境に大きく左右されやすいという背景があります。

一般にロシアは、GDPでは、米国や中国、EU、日本などには及びませんが、一方で世界有数の資源大国であること、また国連の常任理事国で独自外交をすること、さらに世界有数の軍事力を擁すことなどから、危機が発生した場合、マーケットリスクだけでなく、地政学リスクも高まる傾向があります。

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1998年のロシア危機について

1998年のロシア危機は、同年8月に発生した、ロシアの通貨(ルーブル)の暴落やルーブル建て国債の債務不履行(国債償還を5年延期する事実上のデフォルト)など一連の経済危機をいいます。

ロシア危機の背景

1990年代のロシアは、市場経済に移行したものの、石油やガス、金属、木材などの天然資源の輸出に依存しており、世界の景気動向に影響されやすい状況にありました。

そういった中、1997年にアジア通貨危機が発生し、世界の景気が大きく後退し、主要な輸出産品の価格が大きく下落したことが、ロシア経済(財政)をさらに悪化させることになりました。

ロシア危機の発生

ロシア危機は、1998年8月17日に、ロシアがルーブルを切下げ(対ドルで最大24.7%の下落容認)、民間対外債務を90日間支払猶予(モラトリアム)することを宣言したことに端を発します。

これにより、ルーブルが急落し、8月26日には対ドル取引の不成立を宣言し、8月27日には為替取引を全面的に停止し、その後、9月7日に対ドルの取引を再度停止したことにより、1ドル=20ルーブル台へ下落しました。

ロシア危機の影響とその後

ロシア危機により、米国債売り・ロシア国債買いという裁定取引が破綻し、LTCMなど大手ヘッジファンドが経営危機に追い込まれました。また、外国為替市場では、LTCMの破綻をきっかけに、グローバル・キャリー・トレードの一斉巻き戻しが起こり、ドル円相場は2日間で14円以上の円高となりました。

なお、危機後のロシアは、産業構造そのものが破壊された訳ではなかったため、その後の原油価格の上昇などにより、比較的順調に回復していきました。

2014年のロシア危機について

2014年のロシア危機は、ウクライナ騒乱(ロシアのクリミア編入、東部紛争)による欧米からの経済制裁と、急激に進んだ原油安により同国経済が大きな打撃を受けたことによる通貨危機をいいます。

2014年3月のクリミア編入以降、ロシアルーブルが暴落を続ける中、12月にはルーブルの減価幅が50%前後に拡大するに至り、ロシア政府は通貨安の弊害にも配慮せざるを得ない状況に直面し、2014年12月16日にロシア中銀は、政策金利を一挙に17%へ、650ベーシスポイントもの「歴史的な利上げ」を決定しました。

この利上げは、ルーブル安に歯止めをかけるもので、ある程度効をなし、また財政面では、予算ルールなども設けられ、2016年には回復基調へと向かいました。

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